分割協議書を作らずにいたAさんの場合

Aさんは4人兄弟の二男として生まれ、生前、父からは「○○の土地はお前にやるので、維持管理をきちんとするように」と言われていました。数年後父は亡くなり相続が開始されましたが、他の兄弟も皆、父の言っていたことは知っていたので、土地をAさんが単独相続することに異議はありませんでした。
特に問題もないと思い、Aさんは分割協議書も作らず父名義のまま16年という月日が経過しました。この間、バブル期も土地を手放すことなく固定資産税を支払い、父に言われたとおり、土地の管理に努めてきました。
「自分ももう年だし、そろそろ名義変更しておかなければ」そう考えたAさんは、土地の名義変更手続きに移ります。
ところが、名義変更するには相続人全員の同意を示す、遺産分割協議書が必要であると初めて知りました。慌てて、近所の専門家に依頼し相続手続きに入りましたが、この16年間で長兄が亡くなっており、その相続人である配偶者B・子供Cの同意を得なければならないと知らされます。
Bさんとは兄の死亡後は付き合いもなく、またCさんも結婚・転勤で遠方に引っ越していました。やっと連絡が取れ、内容を説明すると「相続分があるのなら分割して欲しい」との回答。それに追い打ちをかけるように、兄弟の一人が「事業の負債があり、やはり分割して欲しい」と連絡がありました。困ったAさんは自分が長年管理し続けてきた事を説明しますが、やはり同意は得られませんでした。
結局、Aさんは他に財産もないので、ずっと守り続けた土地を手放すはめになってしまいました。「こんなことなら早く手続きをしておくべきだった。バブル期に売却すればよかった」と後悔しますが後の祭り。何より父との約束を果たせなかったことには、ただ合掌することしかできませんでした。
アドバイス
相続後、時間が経てば二次相続、三次相続が始まります。
本ケースのように相続当時には相続人ではなかった者が相続人となり、どんどん数は膨らみます。それに従い同意は得られにくくなり、得られたとしても何らかの対価を要求される場合も少なくありません。また、当時同意していた者も状況の変化により、ひるがえして権利を主張してきたりもします。手続きを遅らせることのメリットは何もありません。
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